帝国データーバンクの報告では、運送事業を営んでいる会社のうちで五年継続して黒字を出している会社は、たったの8%だそうです。
当社はその8%のなかに入っています。
しかしそれは新社長が就任してからのことで、前社長の時代は4期続けて赤字を出し、銀行からは危うく見放されるところでした。
みなさまご承知のように、借入金の返済は損益計算書には表示されません。貸借対照表に計上されている借入金は、べて利益の中からの返済になります。利益を出せない会社に対して銀行が支援しないのは当然のことなのです。
退任した前社長の後を引き継いだ新社長が真っ先にしたことは、書類棚で埃をかぶっていた過去の決算書と暦月試算表をすべて取り出し、一か月間、経営分析に没頭したことです。
そして経営分析から算出した「運送原価明細書」にもとづいて、ドライバーひとりひとりの運転日報を克明に調べ上げるなかから、ドライバー(すなわちルート別)ごとの損益を割り出しました。
当社の五期連続の黒字は、こうして経営分析から抽出した問題点に順位を付けて真っ先にできることから手を付けていった、新社長の努力の賜物でした。
新社長は、意識していたかどうかは別として、「経営改善計画」を作成する目的が、ひと言で要約するなら、いかにして利益が生み出せる会社づくりができるか、にあることをしっかりと理解していたのです。
会社を危機に陥れる病原菌は、過去の決算書・試算表のなかにかならず潜んでいます。その病原菌をいかにして退治するかが、「経営改善計画作成」のテーマなのです。
では「経営改善計画」を作成するための下準備として、新社長をまねて、過去三期の財務諸表から病原菌を見つけ出すことにしましょう。
何度も申し上げますが、ただ眺めているだけではなく、エクセルを使って下記資料をそのまま入力し、数値を確認ください。そしてその表を次のシートにコピーし、自社三期分の財務諸表を実際に分析してみてください。他人が見ても分からないことが、経営者なら見えてくるはずです。
経営改善計画を作成するための準備資料
過去三期分の財務諸表
内訳
損益計算書
製造原価明細書
(損益計算書「売上原価」内訳明細書)
→ 「製造原価明細書」の頁を参照
貸借対照表
付属明細書
社内資料:部門別損益
同業者の財務諸指数
経営改善計画を作成するための下準備としての「経営分析」
前社長時代(U期からZ期までの6期間)の財務諸表から分析した「資金収支表」と「製造原価明細書」を、何回かの頁に分けて掲載します。
「経営改善」に意図的に取り組もうとしていく姿勢がこの分析からはすこしも見えてきません。
資金不足を、ただ土地の担保余力をあてにした借入金の増大。
借入は一時的に資金繰りを楽にしたかもしれませんが、次第に会社を底なし沼に引き込んでいく。
その姿が経営分析を通じてまざまざと浮かび上がってきます。
これだけの売上高をあげながら、売上高経常利益率はほとんどゼロ。しかし、具体的には何の施策もこうぜず、資金不足を借入金に依存するばかり。
「客単価×客数=売上高」という経営の基礎が、どこからもみえてきません。