わたし太郎は酒が飲めません。
もう何十年も前のことですが、親しい知人から、「酒を飲めないことを口実に、きみはどれだけ多くの友だちと知り合う機会を失い、どれだけ商売で損をしているか分からないよ」、と注意をされたことがあります。
知人の言うことにも確かに一理あるのでしょうが、でも酒を飲めなくてかえってよかったとも思っています。
ドライバーの真似事をしていたときに、わたしが社長であることを耳にした、取引先の部長さんに招待され、クラブに連れていかれたことがあります。
ミニスカートからの白い足を摺り寄せるようにしてすわった、凄い美人のホステスふたりが飲み物を作ってくれたり、話しかけてくれたり、食べ物を口に運んでくれたりと、「ちやほやと」もてなしてくれました。
好きな女の人とのそんなひと時なら兎も角として、たとえどんなに美人であっても、心のつながりを持たない人と過ごす時間は、ただの苦痛でしかありません。
得意先の部長さんには申し訳ないけれど、バッハに耳を傾けながら書物を紐解いているほうが、どれだけ心が休まったことか。
女の人を侍らせて酒を飲みながら客と過ごす時間も、ときには大切なのかもしれない。
でも商売人としての資質に欠け、どちらかと言えばオタクのわたしは、小説を読むこと、文章を書くこと、愛読する藤沢周平や東野圭吾、大沢在昌、東直己の作品のDVDを見る他は、動物行動学者日高敏隆・弟子竹内久美子や文芸評論家島内景二の書物をあさって時間を費やす方がはるかに充実感があるのです。
そんな人生、面白くない?
確かにそうかも知れませんね。
でも中小企業の経営者であるわたくし太郎には、自分なりに会社を守るため、計数に強くならなければならないという課題を抱えていますので、それを会得するために経営分析に取り組んでいる時間が一番楽しいのです。
「今、幸せだ。今自分が幸せだ、ということは、過去の出来事は、総て、それでよかったのだ、ということだ」。自分に都合の良いところだけを切り取っているのかも知れませんが、これは東直己著『挑発者』のなかの言葉。
つい先日のことです。時間が空いたので、過去の財務諸表・付属明細書・試算表を取り出して、それらを見ながら考え事をしていた時のことです。
「いまさら古い試算表なんか取り出して、いったい何をしているの?」
そんなことを面と向かって言われたことだってあります。
(何をしていようとオレの勝手だろう)
でもね、これが実益を兼ねた(お金にはなりませんが)一番の趣味だし、日々残り少なくなっていく人生を有意義に過ごすこともできるので、毎日黙々と取り組んでいます。
さて前回は投資計画のない「貸借対照表予算」の作成を致しました。
今回は「投資計画」を含む「貸借対照表予算」の作成と、「損益計算書予算」から「資金収支表予測」(わたしにとっては資金繰り表にかわるもの)をしてみます。
その後で、「実績貸借対照表」・「実績損益計算書」・「実績資金収支表」・「実績製造原価明細書」を覗いてみることにしましょう。
何度も申し上げますが、見ているだけではほとんどみなさんのお役にはたてないと思います。自分の手で再計算をし、これをまねて自社の「貸借対照表予算」を作成してみて、必ず「資金収支表」を作ってみてください。
資金繰りを理解するには、それしか方法はないと思いますので。
「地道な努力は常に尊いのだ」
東直己の長編小説『悲鳴』の中に出てくるこの言葉は真実だと、わたし太郎は思っています。
前期の貸借対照表と損益計算書から算出しておく「回転期間」と「投資計画」および「資金計画」表
貸借対照表予算作成シート
貸借対照表予算の作成
貸借対照表予算の完成度を実績で確認する
まとめ
いかがでしたでしょうか?
やはり「貸借対照表予算」の作成は、いつまでたっても難しいです。
「貸借対照表予算」では「現預金」をマイナス500万円と予測しましたが、「実績」ではプラス100万円でした。予算と実績のこのぐらいの違いは、許せる範囲でしょう。
資金収支表の「短期借入金」が増えていますが、これは貸借対照表流動負債「短期借入金」勘定を「長期未払金」として利用したことによるものです。実際は「長期未払金」だと読み替えてください。
「貸借対照表予算」を「投資のない場合」(資金繰り表の作成(5))と「投資があった時」(資金繰り表の作成(6))の二回に分けて説明させていただきました。
お役に立てたてたなら嬉しいのですが。
次回はこの「貸借対照表予算」の作成を応用して、4月から翌3月までの暦月資金繰り表予算(わたしに場合は「資金収支表」)の作成に取り組むことにいたします。