社長・二世経営者のうち、過去の財務諸表を読み返し分析をし続けている人はいったい何人いるだろうか?
おそらく一人もいないだろうと思う。
わたし太郎は後継者に会社を譲ってからも、ほとんど毎日のように、過去の決算書と格闘し続けている。会得した管理会計に磨きをかけるためである。
同じ決算書をすでに20回以上も読み返し、分析をし続けてきたが、そのたびに新しい発見があるから不思議だ。
それはおそらく、わたし太郎が筋金入りのぼんくらであることに起因しているものと思われる。
ただ眺めているだけでは、決算書の内容を理解するのは難しい。
損益計算書・貸借対照表から、要返済債務を算出して債務償還年数を割り出したり、あわせて部門別損益を確認しつつ、必ず資金収支表まで作成する。
もちろんエクセルを使って整理していくのだけれど、銀行の融資担当者が貸付先の決算書の数字をただ入力するだけで、財務分析をし終えてしまうような真似だけは避けている。
なにしろわたしは記憶力が悪い。
財務分析の計算式をしっかりと頭に叩き込むためには、繰り返し繰り返し、エクセルに計算式を入力していくいくしかないのである。
算出してでてきた分析結果を見ていると愕然とする。
本人は一所懸命に働いてきたつもりなのだけれど、如何に無能な経営者であったかが見え見えだ。
「悩んでばかりいないで、頭を使いないさい」
頭を過っていくのは、六十年以上も前に教壇の国語教師から言われた言葉である。
そう、これまでの経営者としてのわたしの人生は、頭を使うことをせず、すべて管理者任せにしたまま、「どうしよう、どうしようか?」、と悩み続けてきただけにすぎない。
古い話で恐縮だが、わたしが社長に就任したと同時に、別会社の社長となった、当時運行管理課長として活躍していた従弟がいう。
「おれなら、会社をもっと大きくできた」
従弟はバブル時代に、売上高一億円にも満たなかった別会社を四億円にまで伸ばしはしたが、今は元の一億円そこそこに低迷している。
売上高一億円と五億円の差は、組織を作り得たかどうかの違いにあると言われている。
わたしがしてきたのは,組織づくりであった。
従弟は運行管理課長当時からすべてを自分の才覚のみで采配してきた。
別会社の社長となってからのちも、夜に昼をつないで、自分一人ですべてをこなしてきたから、組織をつくるということはまったく念頭になかったのだろう。
社長就任祝いに大手婦人下着メーカーの紹介をいただいたり、物流のすべてを当社が担ってきた量販店が量販店Dに吸収合併されて倒産を覚悟したとき、問屋さんが集まって作る協会が、「量販店は他にもある。これからも荷物を出すよ」といってくれた幸運、学卒者の採用をすすめて組織づくりをした以外は、まったくの無為無策であったわたしは、いつもいつも幸運に助けられ、支えられ続けてきた。
わたしが計数(管理会計)を理解できるようになったのも、組織があり、自分の時間をとることができたお陰だと思う。
それでは本論である、経営改善計画書作成、の第一弾として過去三期の財務推移を見でみよう。