ある二世経営者と話をしていたときのことだった。

「おやじは組織を作ったというけれど、俺からいわせれば、役職者のなかにはまともな奴がひとりとしていない。組織なんかやめて、自分一人で何もかもやった方が面倒がなくていい。もしできないことがあったら、それらはすべて外注に任せればいいのだから」、としきりにぼやかれたことがある。

わたし太郎が社長を継いだ遠い昔のことである。ある運送会社に連れていかれたことがあった。

その運送会社は、一般家屋の居間に事務所を構え、仕事はすべて自社でぜず、外注に出していた。営業免許をとるのに必要な、トラック五台は車庫にはいったまま。電話受けをする事務員も一人もおいていなかった。

要するに、取った仕事の運賃から外注費を差し引いた、いわば「利ざや」だけで会社を運営していたのである。

社長は事務所兼居間で、終日寝転がって過ごし、わたしたち来客との対応も、なんと煙草をくわえ、そしてソファーに横たわったままの姿で行っていたから、わたしは呆れてしまった。そして思った。

人は面倒なことがあるからこそそれと取り組むことにより新たな知恵を生み出し、人間として成長をし続けていくのではないか。

この激しい競争社会で、ただ寝転がって気楽な毎日を送っていたら、その行き先は見なくても分かる。

案の定、バブルの崩壊とともに、その会社は仕事のすべてを失ってしまった。

文頭の二世社長も、曲がりなりにも組織があるからこそ、管理会計を学べる時間が持てるのだということを忘れている。

彼のいうようにもし仕事のすべてを外注任せにしてしまったら、居間に寝転がっていた先の社長同様に、何のノウハウも磨かれないまま、やがて会社を閉じてしまうことになることだってありうるのだ。

動物行動学者日高敏隆氏の『人間は遺伝か環境か?遺伝的プログラム論』(文春新書)で書かれている一文を長いけれどそのまま抜粋してみる。

人間にはみんな個性があるから、一人ひとりみんなキャラクターが違う。癖も違う、得意としていることも違う。感覚というかセンスも違う。平均値的な人間というのはいないから、父親という一人の男は、百人、二百人の男たちの中では、ある意味で必ずずれた存在である。母親についても同じことが言える

日高敏隆氏の言うように、人は誰しもプラス面とマイナス面を併せ持っている。もちろん会社組織のメンバーだって同様である。100%完璧な人間なんて一人もいやしない。社長といえども同様である。しかし組織があるからこそ、メンバーはお互いの足りないところを補い合える

ひとりですべてことを処してしまうことも、ときには外注をしなければならないこともあるかもしれないけれど、すべてを外注任せにしてしまおうのは、いささか乱暴過ぎると思う。

社内のメンバー一人ひとりが経営改善計画の目標達成のために、困難と取り組む姿勢が、個人の成長とともに組織の成長をを導いてくれる

経営改善計画書作成(26)では、「改善改善計画書作成」のテーマとして、①客単価を上げる・②不採算路線を廃止して外注費を削る・③長期借入金を減らすことで債務償還年数を短くしていく、の三点を選択することになった。

「経営改善計画」の第一年目と第二年目に取り組んだ課題は、①集荷配達コースの再編と不採算コースを廃止。あわせて②外注費を見直・③固定費の削減・④組織体制の整備の四点である。

この計画が実際にどのように実施されていったかを、これから実際の数値に基づいて、検証していく。



忘備録
資金収支表作成のための計算式

経常収入(A)= 売上高+営業外収益
―(期末売上債権―期首売上債権)
経常支出(B)=((売上原価+販売費)―減価償却費)
+(期末棚卸資産―期首棚卸資産))
―(期末仕入債務―期首仕入債務)
+(支払利息・割引料+その他の営業外費用)
経常収支(C)=(A)―(B)
固定資産関係収支(D)=△((期末固定資産―期首固定資産)
+減価償却費))
特別損益・その他の収支(E)=特別損益―法人税等引当額
―(期末その他流動資産―期首その他流動資産)
+(期末その他流動負債―期首その他流動負債)
+(期末その他固定負債―期首その他固定負債)
―(期末繰延資産―期首繰延資産)
財務収支(F)=(期末短期借入金―期首短期借入金)
+(期末割手・譲手―期首割手・譲手)
+(期末長期借入金―期首長期借入金)
総合収支(G)=(C)+(D)+(E)+(F)
経常収入(A)= 売上高+営業外収益
―(期末売上債権―期首売上債権)
経常支出(B)=((売上原価+販売費)―減価償却費)
+(期末棚卸資産―期首棚卸資産))
―(期末仕入債務―期首仕入債務)
+(支払利息・割引料+その他の営業外費用)
経常収支(C)=(A)―(B)
固定資産関係収支(D)=△((期末固定資産―期首固定資産)
+減価償却費))
特別損益・その他の収支(E)=特別損益―法人税等引当額
―(期末その他流動資産―期首その他流動資産)
+(期末その他流動負債―期首その他流動負債)
+(期末その他固定負債―期首その他固定負債)
―(期末繰延資産―期首繰延資産)
財務収支(F)=(期末短期借入金―期首短期借入金)
+(期末割手・譲手―期首割手・譲手)
+(期末長期借入金―期首長期借入金)
総合収支(G)=(C)+(D)+(E)+(F)