「経営分析」の八回目として、今回のテーマは、「安全性を計る指標」の四つ目として「固定比率」を取り上げたく思います。

わたしは小説を読み終えると、できるだけ欠かさずに、「人物相関図」を作成し、登場人物の役割と梗概(あらすじ)を書くことにしています。

「人物相関図」と「梗概」をまとめあげることは、生まれつき、さほど頭がいいとは言えないわたしにとって、かなり難しいことなのです。

たとえば、小泉八雲(ラフカディオ・ハーン)の『和解』を読み上げたなら、このような「人物相関図」と「梗概」を作成するのです。でも自信はまったくなく、小学校の国語の先生が見ても、思わず吹き出してしまうようなできなのかもしれないと思っています。

人物相関図(『和解』小泉八雲)

若い侍(主家没落し生活に窮して遠国の国司につかえることになり、妻を離婚。出世のために結婚して任地に連れて行った妻の家柄はよかったが、冷酷で我儘なことを知り、やさしく、忍耐強かった前の妻を思い続ける)

(忍耐強く、窮乏の時、夜となく昼となく精を出して機を織り、夫を助ける。善良な美しい女だったが出世のために離婚され置き去りにされる)

新しい妻(いい家柄の娘だが、冷酷で我儘)

梗概 主家が没落し生活に窮した若い侍は、妻を離婚し、出世のために家柄のよい娘と結婚し、新たに使えた国司の任地で歳月を過ごす。冷酷で我儘な妻を厭い、離婚した前の妻を折に触れて思い出し、帰れるようになったら探し出して許しを請い罪滅ぼしをしようと決心する。国司の任期が終わり自由になった若者は、第二の妻を親元に返し、前の妻が住む家に飛んで帰ったには、九月十日の深夜のことだった。屋根には高い草が生い茂る荒れ果てた家の一番奥の部屋の微かな明かりがもれていたふすまを開けると、行燈のかげで縫物をしていた妻が顔をあげた。美しく若いままだった。若い侍は何度も何度も許しを請うと、「あなたのせいではない。わたしが妻としてふさわしくなかっただけ。自分を責めないで」と哀願する。二人は寄り添って夜を徹して語り合った。明け方、目を覚ました若い侍の横には、骨と黒髪だけの経帷子に包まれた骸が横たわっていた。若い侍が任地に赴いた年の九月十日に、心痛のあまり病になり亡くなっていたのだった。

出来としては、おそらく合格点すれすれ、とただ願うばかりです。

でも「人物相関図」と「梗概」を書き上げていくなかで、しっかりと内容が刻み込まれていく

「経営分析」も同じで、ただ目を通すだけでなく、自社の決算書を手元に置き、時間をかけることを厭わずに、「さまざまな財務指標と指標の意味するもの」を自らの手で計算してみることです

経営分析の手法は、決算期を終えるごとに、時間を作って作成し続けることのなかから会得できるし、治療すべき自社の病を、社長自身の手であきらかにできるのです。

もっとも明らかにできたところで、わたし太郎のように、自分では何もできない経営者もいると思う。組織や幹部社員は、そのために存在しているのです。

前置きが長くなりました。

「固定比率」の説明に入ります。

算式
固定資産÷ 自己資本

指標の意味
固定資産を返済の必要のない自己資本でどの程度まかなっているかを示す

判断基準
低いほどいい

中小企業金融公庫(日本政策金融公庫)資料、「財務諸指標」より

サンプル企業の「固定比率」

㈱ T-logistics(暦年資料)

次回のテーマは、「安全性を計る指標」その5、「流動比率」。

最後に、いやな予感がしてならない「新型コロナウイルス感染者数」

(朝日新聞朝刊社会面掲載資料から再加工)