わたし太郎が亡父から引き継いだ会社は、百貨店のほかに衣料品量販店の運営もしていた一部上場企業の専属運送会社だった。
百貨店業態の展開に興味を示していた巨大量販店に、当社の取引先が吸収されることが決まったとき、わたしは体が痺れたようになって身動きさえできず、とうとう床から起き上がれなくなってしまった。
わたしを幼いころから診てくれていた内科の先生が往診してくれて、おそらく精神安定剤だったと思う、注射を一本打ってくれて一時間もしないうちに、立ち上がれるようになった。
義叔母とは学校の同級生だった生命保険の外交員に、わたしには億を超える生命保険が加入させられていた。
わたしは会社を少しでも救えたならと、保険金目当てに死ぬことを覚悟した。
身の回りの整理と心の準備を整えていたときに、問屋さんたちが加盟する協会から、「量販店はまだほかにもたくさんあります。仕事を続けませんか」との連絡が入った。
問屋さんのご厚意のお陰で、会社は継続できることになった。
もちろんわたしの命も救われた。
そして協会がそのような決断を下してくれたのは、もちろん運賃の安さもあったのだろうけれど、それまでの長い間、問屋さんの一軒一軒と丁寧な対応をし続けてきてくれたドライバーおよび幹部社員がいてくれたお陰だと思う。
経営者なら誰でも、一生の間に、幾たびかは経験する危機だとは思いますが、いい取引先と社員たちに囲まれて、わたしは実に幸運な経営者の一人となれたのだった。
そして、これは後日談。
わたしにかけた生命保険はすべて解約した。以来死ぬことが頭をよぎることはなくなって、気持ちがとても楽になった。
さて本論。
今回のテーマは、「債務返済能力を計る指標」その1として「長期資本収支」。
「長期資本収支」の算出式
(長期借入金・繰延手形+設備未払金)/(経常利益*50%+減価償却費)
指標の意味
有利子負債を返済するのにかかる年数を表す
判断基準
短いほど望ましい
㈱ T-logistics(暦年資料)
次回のテーマは、「債務償還年数を計る指標」その2「インタレスト・カバレッジ・レシオ」を取り上げます。
「ギョギョ!」
そんなに驚かれないでください。
本当になんてこともありません。
読めば「なーんだ」ということになります。
ご安心ください。