わたし太郎の本との出会いは、父の書棚であった。
扉を開くと、握りこぶし大の緑鉱石や鉄鉱石、親指大の水晶などが入った鉱石標本箱が三つほど置かれた棚の脇に岩波哲学叢書全40巻(大正15)がならび、その脇に黒田清輝の画集と分厚い洋書(今思えば百科事典のなかの美術冊子だったと思う)があった。
西田幾多郎、阿部次郎,安倍能成、和辻哲郎、田辺元らの名前を知ったのも、哲学叢書を通じてであった。しかし哲学叢書を読み始めたのは高校に入学してからのことであって、もっとも関心をもったのは、黒田清輝の画集と横文字で説明書き(そんなことは当時のわたくしには分かるはずもなかったが)のある美術冊子の方だった。
黒田清輝の描く女性たちと百科事典の中にあったアングルの泉に描かれた口元に笑みをうかべて佇む女の人の裸体、そしてラファエロの聖母子像はただただ美しく、いささかの疚しさを感じながらも、飽くこともなくじっと見入っていたのを覚えている。
美しい女性の姿に見入る一方で、これらの絵画を通して、小説を読んでいるときに、いつのまにか書かれている内容をありありと映像化していたことに気づいた。
当時読んでいたのは「陽のあたる坂道」 ·「 若い人」 ·「 青い山脈」 ·「 あいつと私」などの作品で知られた石坂洋次郎の青春もので、映画にもなっていたから、映像化もしやすかったのかも知れない。
ともかく絵画と小説のふたつから空想を羽ばたかせることを学び、勉強を忘れて、夏目漱石、森鴎外、太宰治、新田次郎などの小説を読み漁った。それは楽しい毎日だったけれど、成績は最悪だった。でも読むことを止めることはできなかった。
専門書ではカールマルクスの「資本論」を読んだ。全巻揃えたのだけれど、マルクスが自分で書いた第一巻は読みやすく映像化もしやすく夢中になって読むことができたけれど、他の巻はまったく面白くなくて読む気さえ起きず、書棚の奥に埃をかぶったままだ。
父はわたくしに会社を残してくれただけでなく、書棚の中の美術書と哲学書を通して、本を読むことの楽しさも教えてくれた。ただ鉱石標本箱には関心がなく、いつのまにかなくしてしまった。
読書を長い間続けてきましたし、文字を読まないと落ち着かないほどですが、映像化すること以外に、他の読書方法を知りません。
さてさて経営改善計画書の作成とは何の関係もないことを長々と書きました。
経営改善計画書の作成する作業に、わたし太郎が読書や絵画鑑賞に時が経つのを忘れたように、一度はみなさんもどっぷりと浸かってみられたらという意味では、こじつけかも知れませんが共通点があるように思います。
株式会社 T-logistics が作成した経営改善計画書の「連続損益計算書(計画)」と「連続貸借対照表(計画)」を見てみましょう。
黄色く帯を描いたところが経営改善計画書の要点になります。
連続損益計算書(計画)
連続貸借対照表(計画)
次回はこの表から経営改善計画書には記載のない、「資金運用表(計画)」を作成してみたいと思います。