行動の伴わない知識は無知と変わらない」という警句があります。

「資金収支表」も同様で、ただ「資金収支表」という言葉を知っているだけでは、経営者にとって何の役にもたちません。

「資金収支表」の作成を人任せにせず、時間が空いたときにあるいは時間を作り、自ら作れるようになるまで、何度も何度もトライし続けて欲しいのです。

わたし太郎は古希を過ぎた今でも、時間を見つけては、自社および他社(大学院時代の友人である中小企業診断士から預けられた)の決算資料を紐解きながら、「資金収支表」の作成に心がけています。

「資金収支表」は経営者にとって、X線撮影を360度全方向からおこなって物体の内部(ここでは会社のいまの状態がどうなっているかを調べるCTスキャン(コンピュータ断層撮影)のようなもので、わたしには「資金収支表」を作成しているときが、テレビをみているより本を読んでいるよりも、はるかに充実した有意義な時間を過ごしているという実感が味わえるのです。

一致するのが当たりまえといえば当たり前なのですが、資金収支表の末尾の数字が、貸借対照表の「現預金」の残高と一致したときの喜びは、わたしにとっては何ものにも代えがたいのです。

ではもう一度資金収支表の作成の仕方を復習しておくことにします。

資金収支表の計算式

経常収入(A)= 売上高+営業外収益

―(期末売上債権―期首売上債権)

経常支出(B)=((売上原価+販売費)―減価償却費)

+(期末棚卸資産―期首棚卸資産))

―(期末仕入債務―期首仕入債務)

+(支払利息・割引料+その他の営業外費用)

経常収支(C)=(A)―(B)

固定資産関係収支(D)=△((期末固定資産―期首固定資産)

+減価償却費))
特別損益・その他の収支(E)=特別損益―法人税等引当額
―(期末その他流動資産―期首その他流動資産)
+(期末その他流動負債―期首その他流動負債)
+(期末その他固定負債―期首その他固定負債)
―(期末繰延資産―期首繰延資産)

財務収支(F)=(期末短期借入金―期首短期借入金)
+(期末割手・譲手―期首割手・譲手)
+(期末長期借入金―期首長期借入金)

総合収支(G)=(C)+(D)+(E)+(F)

経営改善書作成のモデルとなる会社の過去三年間の「資金収支表」を覗いてみることにします。

以下の項目の数値を、この表をみてじっくり観察をしてください。

経常収支
固定資産収支
特別損益・他収支
財務収支
現金・預金増減

浮かび上がってきた問題点
① 事業を維持していくためにはプラスでなければならない「経常収支」がマイナスもしくはゼロに近い数値。
② 財務収支が大幅なマイナス。
③ その結果「現金預金」が激減。

資金収支表の下に添付された製造原価明細書をみると、黒字同業他社に比べてこの会社の売上総利益は2%低いだけなのですが、実際はそうとう危機的な状態にあることが、この数字から窺えます。

次回からは、このモデル会社の「経営改善計画」の作成に取り組むことにします。