「経営分析を教えて」、とよく頼まれます。

かれこれ四十年以上も前のことになります。経済学部を出て大学院に進み、父の会社を引き継いでみたものの、財務諸表がまったく読めませんでした。

後に公認会計士試験に合格する経理課長に、簿記の仕訳の指導を受けましたが、まったくチンプンカンプンで、呆れてさじを投げられました。

同じ頃のこと、大学院を終えたものの、助手の席に空きがなく、数年の後に他大学の教員に応募して採用となり、ついには教授にまで上り詰めた先輩が、一時、税理士を目指し、専門学校に再入学したことがあります。

その専門学校はお茶の水にあったので、喫茶店で待ち合わせをして挨拶も早々に、「仕訳って難しくはありませんか」と尋ねたときに、「簡単だよ」と答えられたときには本当にショックでした。

進学校として知られる都立新宿戸山高校を卒業した先輩と、田舎の県立高校を出たわたしとは、頭の構造がまったく違う、とひどく落ち込んでしまいました。その帰りに、たまたま立ち寄った書店で、山口孝著「企業分析」(新日本出版)に出会ったのは、幸運としか言いようがありません。

本の値段は1900円もしましたが、わたしが知りたかったことがとても分かりやすく書かれていたものですから、すぐに買い求めました。

購入したその日から、睡眠時間を削り、勉強に没頭しました。本がボロボロになるまで何回も何回も読み返しながら、あわせて自社の資料を分析し続けたところ、ある日ふと気が付いたら、以前はまったく理解できなかった仕訳が、いとも簡単にできるようになっていたには、我ながらほんとうに驚きました。

人はとかく安易な道を歩みたがるものですが、やはり実際に自分で苦労してみないと、何ごとも身につかないものだと、そのときに深く学びました。

みなさんも、見るだけ、読むだけではなく、実際に自分の手で、自社の過去の決算書を徹底的に分析してみてください。それを怠ると、「資金収支表」も「キャッシュフロー計算書」も身につけることはできません。

もし人から分かり易く教えられても、これまでの自分の経験からすると、直ぐに忘れてしまいます。教えてもらうことを考えるまえに、自ら苦労して学び、会得していくことを強くお勧めします。

さてこれから、4月のキャッシュフロー(資金繰り表)を算出してみましょう。

前もって整えた「損益計算書予算」・「回転期間」・「投資計画」・「資金計画」・「消費税他諸税納付計画」の4月の数字を、貸借対照表の資産・負債の勘定科目に記入していってください。

「現預金勘定」は空白のままにしておいて、「資産合計」と「負債・純資産」の差額をそのまま、空白にしておいた「現預金勘定」に記入します。

貸借対照表の「現預金」と「営業活動によるキャッシュフロー」と「投資活動によるキャッシュフロー」、「財務活動によるキャッシュフロー」の三つの合計が一致すれば、「キャッシュフロー表予算(資金繰り表予算)」の完成です。

さっそく作成してみましょう。

損益計算書予算(4月)



貸借対照表予算(4月)



利益金処分案予算(4月)



資金繰り予算(4月)

出来ましたでしょうか。

次回は5月の「キャッシュフロー予算(資金繰り予算)」を作ります。