もう四十年も前のことになる。
妻と二人でブダペストのレストランで食事をとっていたときのことだ。
テーブルのすぐ脇まできて、ジプシー音楽を奏でてくれたのが、驚いたことに高名なバイオリニスト、ラカトスサンダーその人であった。
このようにして文章を書いていても、四十年が経ったいまでも、彼の奏でる美しくも哀しいメロディーが頭の中を流れていく。
経営分析も、このように人の心を引き付けて止まないように語りたいものだ。

今日のテーマは「自己資本比率」

自己資本比率

自己資本は借入金とは違って返済の必要はなく、利払い義務もないから、自己資本が多いほど企業経営は安定する。そして自己資本は過去の収益状況も反映し、会社の歴史そのものが刻み込まれているといえる。

式  自己資本比率=自己資本/使用総資本

自己資本比率(%)

日本政策金融公庫取引先データ(平成11年度)による数値
上位:優良企業
中位:平均的企業
下位:平均以下の企業

自己資本比率の検討

A社・B社の貸借対照表をもとにして、自己資本比率の検討をしてみましょう。

まとめ

A社もB社も、ともに中位の企業。しかし長い歴史がある割には、両者ともに自己資本が薄弱に過ぎる。
仮に経常段階で1000万円の利益を毎年出してきたとして、そのうちの半分を法人税と考えれば、会社に残るのは500万円。500万円を50年間蓄積してきたとするなら、2憶5千万円は自己資本として積まれている計算になり、A社の自己資本比率は91%(250/275)B社の自己資本比率は28%となり、優良企業になれていたはず。
おそらく何度かの欠損を経験してきたに違いありません。

失敗を重ねて鍛えられるのは、会社も人の人生も同じなのですね。

次回は長期安全性のもう一つの指標である「固定長期適合率」についての検討をしてみよう。