「資金繰表」には、「金銭出納帳」・「総勘定元帳」・「会計伝票」・「損益計算書と貸借対照表」から作成する四つの方法があります。
「金銭出納帳」・「総勘定元帳」・「会計伝票」の三つから作成する「実績資金繰り表」は経理責任者にお願いし、「損益計算書予測」と「貸借対照表予測」とから作成できる、「資金移動表」・「資金収支表」・「キャッシュフロー間接法」の資金三表を使って「資金繰り予測」を立てることを、期首には欠かさず行っています。
同時に各月ごとに経理担当者から提出される試算表に基づいて、「資金繰り実績」と「資金繰り表予測」との確認を忘れずに行い、「資金繰り表予測」の完成度を高めることにも心がけます。
出社して、毎日二時間ほどかけて前日の資料に基づいて資料の再加工を終えると、過去の決算書と試算表を取り出しては、これまで何度も繰り返してきた「資金三表」の作成に、ぼけ防止も兼ねて取り組むことにしていますが、不思議なことに、まったく飽きがこない。
部屋にときどき顔を出しにやってくる息子からいつも言われます。
「過去の数字はどうにもならない。大切なのはこれからでしょう」
しかし年寄りのこのわたしに、未来などあるはずがない。
代表者を息子に譲り、会社の将来をすべて委ねたのだって、そのためではないか。
一応息子には管理会計の基礎は伝えてはあるけれど、まだ自力で「資金繰り予測」を立てるまでには至っていない。
おそらくほどんどの二世経営者はそうなのだろう。
わたしの後輩の中小企業診断士は、ダイエーの中内潤さんとは同じ大学院の研究室仲間であった。
その潤さんでさえ、ダイエーの未来を切り拓くために、新規事業の任に当たったが、ついに成功させるにはいたらなかった。
潤さんと比較するのも失礼な話だが、わたしも父からゆだねられた新規事業を切り拓こうとしたが、ものの数年も経たないうちに完敗した。
創業者である父の息子ではあったけれど、わたしにはどこをどうひっくり返してみても、父のような「商才」はない。
会社を譲ってはくれたものの、代表者として何をしなければならないかを、一言も教えてくれなかった。
社員たちからは陰で「バカ息子」呼ばわりをされながら、長い時間かけて、一から自分自身みずから学んでいかざるをえなかった。
だから、父から譲られた会社は、わたくしにとっては大学院であった。
しかし会社は収益を上げてなんぼの世界だから、ただ部屋に閉じこもって、勉強だけをし続けているわたしなど、社員たちにとってはなんで会社にいるのかわからない、ただの迷惑な存在でしかなかっただろう。
わたしが代表者となったときに、関連会社の社長として出向させられた、当時運行管理者をしていた、たたき上げの従弟から、
「おれがやっていたら、会社をもっと大きくできた」
と面と向かっていわれたのは数年前のことだった。
二世経営者の皆さんには、わたしと同じ轍を踏んでほしくない。
二世経営者が真っ先に取り組まなければならないことは、「新規事業」などではなく、「管理会計」の習得なのだ、と断言していい。
経営者が習得しておかなければならない、資金三表は、「資金収支表」・「資金移動表」・「キャッシュフロー計算書」の三つです。
同じ「貸借対照表」と「損益計算書」から作成した、資金三表を載せておきます。
このブログには、資金三表の作成の仕方が書かれています。
ぜひ自社の決算書あるいは試算表を書棚から取り出し、もし「現預金勘定」会わなければ一致するまで、繰り返し来る返し繰り返し「決算書」または「試算表」の数字と睨めっこをしながら、あきらめずに挑戦してみてください。