「計画倒れ」という言葉をよく耳にします。

計画をしてみたものの実施・実行に至らないままで終わる、という意味。

銀行から提出をもとめられて「経営改善計画書」を作成してみたものの、80%の達成ができれば上出来の方で、ほとんどの企業が未達のまま終わるそうです。

このブログを書くために資料をこころよく提供してくれた ㈱ T-logistics のV字型回復劇は、もし上場企業であったなら、新聞・雑誌・テレビなどのマスコミの脚光をあびて、きっと本にもなったことでしょう。

就任したての新社長の実行力はそれは素晴らしいものでした。

しかしその効果を著しいものにするための伏線として、経費の無駄遣いを「ケチ」と蔑まれても削げるだけ削ぎ、自らの役員報酬を従業員以下にまで引き下げて耐え忍んだ前社長の生き方も大きく貢献していたのです。

京セラ稲盛経営12ヶ条の5条には以下の言葉があります。

経営の常識として、売上を増やせば経費もそれに従って増えていくものと考えます。しかし、それは誤った常識です。

「売上を最大限に伸ばし、同時に経費を最小限に抑える」創意工夫を、徹底的に続けていく姿勢こそが高収益を生みます。

前社長の大好きな言葉です。しかし、新社長とは違って、具体的に何をすべきかまでは考えが及ばなかったようです。

経営の基本は「客単価×客数」だ。

これまでに何度も繰り返してきた言葉です。

「値上げ」も「客単価」を引き上げる方法のひとつです。

しかし肝心なのは、どんなに高いお金を出しても、それに十分見合うだけの満足感を客が得られるだけの付加価値を提供できるか否かです。

同じ価値のものの価格をただ引き上げるなら、よほど希少なものでない限り、客離れを招くこと必然です。

四十年ほど前まで、一般消費者は遠方の知人に荷物を送ろうとすれば、国鉄(JR)の駅の窓口まで自分で運び、知人も最寄りの駅まで受け取りに取りに行かなければならなかった。

それがいまでは、運送会社が自宅まで荷物を取に来てくれるし、翌日にはそれも時間指定で知人宅まで届けてくれるようになった。

いまではごく普通のことだ。

しかし新たにこのような運送商品を創造できた経営者は、やはり天才だと思う。

V字型回復をしてみせたものの、値上げに頼るのではなく、より高い付加価値商品を生み出すという、厳しくも創造性豊かな経営者本来の道を、いま若き新社長は歩み始めていく。

製造原価明細書(同業他社比較)

経営改善計画実施四年目