今回のテーマは「成長性を計る指標」の二つ目、「売上高増加率」。

「売上高増加率」に取り組む前に、みなさんにはもううんざりだろうけれど、前回と全く同じ言葉をくりかえさせていただきたい。

文芸評論家小林秀雄は『モーツァルト・無常という事』(新潮文庫)の「モーツァルト」の章で、「模倣は独創の母である。唯一人のほんたうの母親である。(中略)倣してみないで、どうして模倣できぬものに出会へようか」と述べている。

「経営分析」も、掲載の計算式を真似て、書棚から自社の財務諸表を少なくとも過去三期分を取り出して算出し、自社が「上位」・「中位」・「下位の」いずれに位置しているかを確認して、素直に自社の現状を見つめてみることだ。

社長を引き継いだ遠い遠い昔のことだが、まったく計数のわからなかったわたしは、亡父の書類棚の中で埃をかぶっていた会社設立以来の決算書をすべて取り出し、立ち寄った書店でたまたま手にして購入した「経営分析」の教科書(『企業分析 経済民主主義への基礎』山口孝著 新日本出版社 1977年7月25日初版 定価1900円)をぼろぼろになるまで読み返し、それこそ何年も何年もただただ教科書のまねをし続けるだけで、どうにかこうにか計数をものにすることができるようになったのである。

その積み重ねのうえで、銀行の支店長でさえ難しいと語っている「貸借対照表予算」を作成できるようになり、自社の四部門の門長から提出された「損益計算書予算」と組み合わせ、資金繰り表予算に最も近いといわれる「資金移動表」のみならず、「資金収支表」・「キャッシュフロー表」を含む「資金三表」をいつの間にかできるようになっていた。

「模倣」まさに「独創の母」であった。

極め付きの鈍であるわたしでさえ、どうにかものにできた「経営分析」だ。

みなさんも安心して取り組まれてほしい。

「成長性を計る指標」の二つ目、「売上高益増加率」

算式

(当期売上高 - 前期売上高) ÷ 前期売上高

指標の意味

売上高の伸び率を表す。

判断基準

高いほどいい

中小企業金融公庫(日本政策金融公庫)の資料に、この指標の「上位」・「中位」・「下位」はやはり掲載されていない。そこで友人の中小企業診断士から預かっている資料から作成してみた。おそらくこの数値は、当たらずとも遠からずの数値だと思う。

経営者は、下記添付資料を真似てそこで期が終わるごとに、「暦年比較」の表を、自社の財務資料から忘れずに作成してほしい。

 



コロナによる「緊急事態宣言」が解除され、当社の売上高も元の水準に戻り始めています。しかしながら、4月と5月の売上高は例年の60%ほどで、経常利益は大幅な赤字。長い人生にはほんとうに思いがけない事態に遭遇する。わかってはいるけれど、経営者にとっては、ただただ辛い。

コロナ感染者数(都道府県別)

次回の「経営分析」のテーマは「安全性を計る指標」七つのうちのひとつ「当座比率」。