「経営改善計画」を要約すれば「収益(=経常利益)を出す仕組みをいかにして作り出すか」ということになる。

この言葉を早とちりして、すぐに「人件費削減」と取り組み、社員の勤労意欲をなくしてしまう経営者が多い。

これまでに何度も繰り返してきたが、収益を上げる経営方式は、あくまでも客単価×客数=売上高である。

人件費や諸経費を削減する前に考えるべきことは、客単価に改善の余地はないか、客数を増やすにはどうしたらいいいかだ。

1×1は1でしかないが、2×1=2だし、2×4=8にもなる。

資料の公表を認めてくれた ㈱ T-logistics の過去の財務推移から見えてくるのは、客単価×客数=売上高という経営方式が経営者の頭から欠落してた、ということだ。

㈱ T-logistics は、得意先の大半が大手企業で、安価で丁寧な仕事ぶりが評価されていて、事業基盤は安定。

安価な運賃がどうして可能だったのか?

それを解くカギは、積載効率。

㈱ T-logistics の運賃は、トラック一台当たりではなく、荷物一個いくら。
ひとつの問屋が出してくれる荷物が50個であっても、五つの問屋を集荷すれば、預かった荷物の総個数は250個になる。

積載効率が高くなればなるほど、すなわち預かる荷物が多くなればなるほど、トラック一台当たりの運賃は高くなる仕組みだ。

㈱ T-logistics の車両のほとんどが、集荷・配達ともに、積載効率70%を超える。

しかし過去の財務推移をみると、以下の三つの問題点が浮かび上がってくる。

㈱ T-logistics は、主に首都圏の衣料・雑貨問屋の商品を大手スーパーや量販店の物流センターに配送する衣料・雑貨専門の運送会社。

① 消費低迷のなかで、取扱荷物は徐々に減少しており、不採算な集荷・配達コースが増加している。

② 平成23年以降は、東日本大震災の影響で、売上が落ち込む。

③ トラックの積載効率が70%を下回ることが多くなってきた

経営改善計画初年度の目標

不採算な集荷・配達コースを廃止することで収益を高める。

経営改善計画初年度の「製造原価明細書」

「経営改善計画の準備」で過去の財務数値を検討する中から、抽出したいくつかの問題点から、取り組みやすいものから改善をまずすすめていく。

忘れないで欲しいのは、あれこれと手を付けてあぶはちとらずにならないことだ。

肝心なのは「売上高経常利益率」をあげることだ。「売上高経常利益率」さえ上げていけば、他の財務諸指標はすべてよくなっていく。

とにもかくにも「売上高経常利益率」をあげるために、改善につぐ改善に全力を尽くすことだ。

次回からは、「経営改善計画」を詳細に作り上げていこう。