今日ある社長さんがこんなことを言ってわたしを訪ねてきました。

「借金を返してもかえしてもいっこうに資金繰りの苦しさは変わらない」

そういって決算書類を見せてくれました。

貸借対照表をみると確かに現預金は増えていません。

固定資産の購入は長期未払金(リース)で行われていますので、減価償却費と相殺、現金預金勘定とは無関係。

特別損失の項に計上された雑損に問題がありそうですが、借金を返済しても資金繰りが楽にならないのが、「借金の恐ろしさ」。

借金の返済額を超えるだけの収益をださないかぎり、借金を完済するまで続くという「借金地獄」。土地を担保提供している場合は、返済がすすめば進むほど、土地の担保余力が増えて、新たな借金がしやすくなる、というだけの話。

決算書を返しながら、わたし太郎も、四十五年間、それで苦しみ続けてきたと社長に話した。

でも借金がなかったなら、管理会計という宝物を得ることはできなかっただろう、とも。

本題

「経営改善計画」を立てるには、過去の財務諸表の分析からはじめ、自社の問題点を抽出する。

経営改善計画作成(2)の部門別「製造原価明細書」の数値と「黒字同業他社」および「同規模同業他社」の数値を比較検討するだけで、何をしなければならないかが見えてくるはず。

おそらくは「売上高総利益率」が著しく劣ってきているはずなので、「経営改善計画」で最優先されなければならない課題として、「売上高総利益率」を上げるためには何をすべきかがあげられる。

㈱ T-logistics の例

① 運送部門における、消費低迷による取引先の取り扱い荷物の減少と不採算な集荷・配達コースの増加。

② 商品管理業務を長年にわたって受託してきた関西の問屋さんとの取引が物流一元化で終了し、これまで目に見えてこなかった運輸部門の採算の悪さが目立ち始めた。

③ これに追い打ちをかけたのが、東日本大震災。

過去五年間の財務諸表・資金収支表・売上原価明細書から、㈱ T-logistics の「運輸部門」のただ体を動かして働くだけで、なんら改善に挑もうとしない経営陣・管理者の姿勢がアリアリと浮かび上がってくる。

損益計算書はほとんど収支ゼロ。

それが顕著に表れているのが「資金収支表」の「経常収支尻」であることに注目して欲しい。

繰り返します。ただ見るだけではなく、自分の手で、「資金収支表」を実際に作ってください。それを重ねていくことで、並のコンサルタント水準なら軽く超えてしまう。

「資金収支表」をわがものとすることで、自分で自分をコンサルトできる経営者へと変身しよう。

㈱ T-logistics の過去事例(U期とV期)