孫娘が着ていたTシャツにふと目を向けると「Believe in yourself」(自分を信じよう)とのロゴが書かれていた。

ずっと昔から自分にまったく自信を持てないわたしは、そのロゴをみて、神の啓示のように思えてならなかった。

亡父から会社を継ぎはしたものの、自分にまったく自信を持てないまま、ただ年月だけが過ぎていき、今では七十の半ばを超えてしまっていたからです。

わたしが就任以来取り組んできたことといえば、わずかに「計数(管理会計)」の習得だけ。

でも息子が会社を継いでくれた時、わたしは受け継いだのは会社だけ、それだけでも有り難い話なのだが、会社の運営には不可欠で、習得に時間を要する「計数」を、プラスαのもとのして、伝えることができた。怪我の功名かもしれないけれど、伝えるものがあってよかった!、と胸をなで下ろしている。

経済学や商学部で学ぶ「経済学原論」のなかに必ず載る「損益分岐点分析」を、会社に入ってから、生かそうと考える経営者は少ない。

わたしもまたその一人だった。

転機が訪れたのは、遠い昔、もう二十年以上も前のことである。

中小企業金融公庫(日本政策金融公庫)の浦和支社に新たに赴任してきて当社の担当者(わたしが学んでいた大学院の、経済学部を出られた方)が、地方銀行の融資担当者を対象とした一週間泊りがけの講習会に、「一般企業の社長では無理だ。とてもついていけない。認めることはできない」、と渋る上司を説得し、参加させてくれたことがある。

人の一生はまさに人との出会いで、その担当者にはいまなお感謝し続けている。

わたしが自分を信じることができるようになったのは、講習に参加した各銀行の融資担当者も、知っていることはわたしとはほとんど変わることがなく、むしろ経営の実態を知るわたしのほうに強みがある、ということを知ったからだった。

そしてこれは後日談。

公庫の関連会社、㈱経営ソフトリサーチでは、わたしが参加した「地方銀行融資担当者」の講習会の経験を踏まえて、「中小企業の経営者を対象にする講習会」を開講するというおまけまでがついた。

渋る上司を説得して、講習会への参加の労を取ってくれた当社担当者のご恩に、少しは応えることができた。

わたしの講習会への参加が役に立った。

そのことだけで、幸せな気持ちが、じんわりとこみ上げてくるのを覚えてならない。

先ほども書きましたけれど、「経営計画の立案」に欠かせない「損益分岐点分析」を、会社の運営に実際に生かそうとする経営者は稀です。

月々の「試算表」が経理から提出されるごとに、これまでに学んできた「資金三表(キャッシュフロー表・資金移動表・諸金収支表)」および「損益分岐点分析」を自らの手で作成することのなかから、経営者には会社が抱える問題点が現実味を帯びて上がってくるはずです。

ぜひ作成してみてください。

各月「損益分岐点分析」作成例