わたしが長らく社長を務めた会社は、すべて当月20日締め、翌月末に入金という、「売掛金」が全部で「受取手形」を受け取った経験はない。「買掛金」や「外注費」も同様で、支払手形を振り出したことはまったくない。

だから「製造業」などの「決算書」を、中小企業診断士の資格を有する友人から見せてもらって、「経営分析」を試みても、「受取手形」・「割引手形」・「譲渡手形」の扱いで、しばしば間違いを犯してしまう。

ここ数日、ずいぶん前に受講した「地方銀行融資担当者」を対象の一週間泊りがけの講習会の資料を分析しながら、当時は理解していたはずなのに、やはり「手形」で躓いて、三日間、睡眠しているときでさえ、資料に取り組み、悩んでいる夢ばかりを見続けものだから、せっかくの週末だというのに、まったく寝た気がしなかった。

それが今朝、早朝の散歩をしている途中で、自分の計算式の過ちにはっと気づき正解を得たのが、次回に掲載を予定している資料である。

次回「連続貸借対照表」と今回「連続損益計算書」の二回に分けて「経営分析」の検討をしてみよう。

いくつ歳をとっても、腑に落ちるというのは、本当にうれしくて、わたしはどちらかといえば信心深いほうではないけれど、生前亡父が床の間に飾ってそのままにしてあった観音像に向かって、思わず手を合わせたほどだ。

この三日間、勉強にくたびれると、芥川龍之介の短編集を久々に手にして、丁寧に読み直してみた。

「白」という犬の物語は、仲のいい麟家の「黒犬」が犬殺しに捕まりそうになっているのを見た「白」が「危ない!」と「黒」に呼びかけようとしたとき、「貴様から罠にかけるぞ」との犬殺しのにらみつける目が怖くて、「白」は逃げ出した。逃げていく「白」の耳に、けたたましい黒の鳴き声が聞こえてきた。

漸く家にたどり着くと、庭では「白」をかわいがってくれている姉弟が遊んでいました。「白」が近づくのを見た姉弟は「この黒犬はどこの犬」とお互いに顔を見合わせた。

「白」は「ボクです、ボクです」と吠え立てると、「狂犬病かも知れない」といってバットで打たれて外に逃げ出した。

流浪の旅にでた「白」は「義犬」となって、行く先々で人助けをしましたが、自分のことが嫌でたまらず「自殺」をしようと考えました。死ぬ前に自分をかわいがってくれた姉弟のことがどうしても忘れられず、またバットで殴られてもいいから、一目会いたいと家に戻っていく。

庭の芝生で転寝をしていると、「白が戻っている!」との姉弟の喜びの声がして、「白」は抱き上げられた。

「白」抱き上げた姉の黒い瞳には、白い犬の姿が小さく映っていた。

そしてわたしの赤鉛筆書きで、「友を見捨てる悪い心が、白を黒に変えた。しかし、自分にとって一番大切な命を捨てようとの覚悟が好転のきっかけとなった」、との朱が入っていた。

芥川龍之介は、「杜子春」でも「蜘蛛の糸」でも同じ内容を繰り返している。「地獄変」のように、「好転の決意」を抱かない主人公は地獄へと落ちていく。

「蜘蛛の糸のように細いけれども、数百万の人々を運ぶことができる。そしてその糸を攀じのぼる人々が多ければ多いほど、その人々の努力は楽になる。しかしいったん人間の心に、「これは私のものだ。正しさの幸福をひとりじめにして、誰にだってわけてやるまい」という考えが起こるや否や、糸は切れて」しまう。(吉田精一の「あとがき」より)

ひょっとすると「経営分析」を中小企業の二世経営者にわかりやすく伝えたいというわたしの思いに、天上のお釈迦様が、「解答」という細い蜘蛛の糸を下ろしてくれたのかもしれない。

経営分析の問題1(講習会資料より)

「連続損益計算書」と「連続製造原価明細書」に基づいて、「生産収支表」の空欄(黄色い部分)を埋めてください。

「生産収支表」


「連続損益計算書」




「連続製造原価明細書」




回答は次回に掲載の予定。