「二世社長が新事業に成功して社員たちをあっ!と言わせてやろう」などと意気込み、成功率わずか2%の新規事業に取り組もうなどと決してしないでください。
そのまえにすべきことは、一、二年をかけて、過去の決算書の経営分析をじっくりと行い、自社の「売上原価・販管費・営業外経費」の無駄を探し出し、「改善に次ぐ改善」に焦点を合わせて「内部改善」に全力を致すべきです。
損益計算書(売上原価)の頁で、このようにお話をしました。ほんとうに、「売上原価」の中には、たくさんの「改善」の余地が含まれています。
例えば
「仕入高・原材料費・外注費」
低い単価で他社から購入・発注が可能なのに、購入先・外注先の見直しが長期間成されていない。
不良率が高い。
「人件費」
人員過剰により、人件費の負担が大きくなっている。
残業代が必要以上にかかっている。
「経費」
経費が嵩んだまま放置されている。
費用対効果の測定がなされていない。
不採算部門を抱えている。
「支払利息」
事業に関係ない借入、稼働していない資産等にかかる借入金の利息が負担になっている。
売上原価
売上高 - 売上原価 = 売上総利益
商業(卸業・小売業)の売上原価
売上原価 = 期首商品棚卸高 + 当期商品仕入高 - 期末商品棚卸高
製造業の売上原価
売上原価 = 期首製品・仕掛品棚卸高 + 当期製造経費 + 期末製品・仕掛品棚卸高
当期製造経費 = 原材料費 + 労務費 + 外注費等製造諸経費
「営業キャッシュフロー」も、そっくり同じことが言えます。
「営業キャッシュフロー」を改善するためのポイントを「損益項目」と「貸借項目」の二つに分けて検討してみます。
「損益項目」
① 原材料・商品仕入価格の引き下げ
② 外注費の引き下げ
③ 一般管理費の引き下げ
「貸借項目」
① 在庫削減
② 売上債権の回収短縮化
③ 支払債務の支払長期化
これらの六つの項目に取り組むことで、「営業キャッシュフロー」の改善ができます。
営業キャッシュフローは、事業活動から得られるものですから、その改善には、収支向上が不可欠ということになります。
「投資キャッシュフロー」を改善するポイント
自社の既存事業から外れた事業に投資することは止めてください。そしてその投資が自社の存続や将来のために必要かどうかで判断すべきです。そしてすでに投資したものについても吟味し続けるすべきです。折角「営業キャッシュフロー」で資金を生み出したというのに、「投資キャッシュフロー」で失敗しては、まるで無意味です。バブル期末期に土地や証券、ゴルフ場を買い漁った大半の企業が投資に失敗したことを忘れないでください。
「財務キャッシュフロー」を改善するポイント
取引している金融機関との信頼関係の構築するためには、自社業績等の綿密な情報提供を怠らない、つまり、金融機関との常日頃からのコミュニケーションを大切にすることです。
コミュニケーションの土台には、ただ顔を見せに行くだけではだめで、自社の「売上原価」の中には、必ずたくさんの「改善」の余地が含まれていますので、過去の決算書の経営分析を丁寧に行い、自社の「売上原価・販管費・営業外経費」の無駄を発見し、「内部改善」に全力を尽くしている姿を数字の上で示し続けなければなりません。
日本政策金融公庫の資料はどれもとても分かりやすく書かれていて、経営をしていくうえでとても役立ちます。今回の内容も、日本政策金融公庫(旧 中小企業金融公庫)の資料を大いに参考にせていただきました。