今回で、亡父が会社設立してから5年間の決算書分析を終わりにして、次回からは「経営計画の立て方」を主題に、話をすすめていきたいと思います。
手元にある某製麺業の設立してからの三年間の「決算書作成」に取り組みながら、簿記の基礎である「仕訳」から、「合計試算表」を作成し、「整理記入」を終えて後に、「損益計算書」と「貸借対照表」の二つを作成し、資金繰り表のひとつである「資金収支表」を作ったその後に、「決算書からつくる経営計画」に取り組んでみよう。楽しみにしていてください。
さて本題である、亡父会社設立5年目の決算書、を見てみましょう。
資料を作成しながら、懐かしい亡き父と、心のなかで、じっくりと思う存分対話ができたことは、ほんとうに嬉しかった。
「計数を身につけなさい」
わたしが二世として入社したときに、父から言われた言葉だ。
経理責任者を「公認会計士」試験に合格するまで育て上げた父ですが、「具体的な計数の仕組み」についてわたしにはまったく伝えてくれなかったものだから、独力で「計数」を会得しなければならず、寄り道に踏み迷い、大変な長い時間がかかった。
「税務会計」はそれが専門の顧問税理士に任せればよかった。
しかし経営者が忘れてはならない「管理会計」は、税理士からは学ぶことはできない。
習得するには自力で取り組まなければならず、進歩している実感をまったく掴めないままに、時間だけがただ無駄に過ぎ去っていく。
「社長の息子は、仕事らしい仕事はなにひとつしない。いったい毎日何をしているのだ」
そんな陰口が耳に入ってくる。
トイレがひどく汚れていたので、たわしを使って、便器の掃除をしていた時のことだ。
公認会計士の資格を狙う経理責任者とドライバーの二人が中に入ってきた。
掃除をしているわたしに気の毒そうな表情を浮かべたドライバーに向かって、経理責任者はこう言い放った。
「トイレ掃除しかできない奴には、トイレ掃除をさせておけばいい」
ある日、ドライバー全員が出払っているときに、緊急に配達しなければならない荷物がでた。
その経理責任者が、運行管理者から配達伝票を受け取って、わたしが座る机の前を通るとき、チラッと侮蔑の目をくれて呟いた。
「まったく何もできない奴だな」
運転席に乗り込んだ経理責任者はトラックの窓から顔を出して、わたしに向かって憎々しげにつぶやくのが、口の動きで分かった。
「役立たず!!」
社員たちの陰口と冷笑、蔑み、侮蔑が続く日々の中で、ただ黙々と「計数」を習得するだけの時間は、本当に辛く厳しいものがあった。
何もできない、何もわからない………。
二世という存在は、おそらくどこの会社でも、邪魔な存在でしかなく、わたしが経験したのと同じような、蔑みと軽蔑の目に晒されているに違いない。
二世に優しいのは女子社員だけ。
そしてその女子社員たちの二世に向けれるまなざしが、男性社員の蔑視、侮蔑、侮り、蔑み、軽蔑、腹立ち、憤り、そして怒りに、さらなる油を注ぐことになる。
昔から、たったひとつのことにしかのめり込めない不器用なわたしは、社長に就任してからも、引退後も相変わらず多忙な毎日を送る父の、まるでお抱え運転手のような存在となって、送迎と外出時の自動車の運転に時間の大半を奪われ、肝心要の「計数」を学ぶための時間に割くことのきない。
気楽といえば気楽この上もない身分だが、父が亡くなる日まで、ただ運転をし続けるだけの日々が続いた。
しかしながら、わずかながらの時間を見つけてはも欠かすことなく勉強を続けていたある日のことだった。
突然に、まるで濃霧か瞬く間に晴れていくように、「計数」という険しい山の全体像が見えたのだった。
そのときは、本当にうれしかった。
その喜びを、ぜひとも、二世経営者のみなさまには味わってもらいたく思う。
では
そして病院では対応しかねるほど増大し続けているコロナ感染者数